1st mini album「[2O2O]」のオフィシャルインタビュー公開!

1st mini album「[2O2O]」のオフィシャルインタビューを公開しました。

ぜひインタビューを読みながら、初となるミニアルバムをお楽しみください!


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「今こそum-humが世に打って出ていけるような気がしてる」


昨年、関西最大級の音楽コンテスト『eo Music Try 19/20』でいきなりグランプリを獲得以来、熱い注目を浴びる平均年齢21歳、大阪発の4ピースバンドum-hum(ウンウン)が、結成から約2年にしてキャリア初のミニアルバム『[2O2O]』(トゥエンティツーオー)をついに完成させた。先行配信された「Ungra」、「JoJo」でも、ソウル、ジャズ、ヒップホップ、オルタナティブロックetc……多岐にわたるジャンルを独自のバランス感覚で横断する得体の知れないグルーヴで、底知れぬポテンシャルと異質な存在感を感じさせていたが、それが氷山の一角であったことを証明するかのような全8曲は、冒頭から白昼夢がごとくリリックの連鎖とトリッピーで予測不能のサウンドスケープが怒涛のように押し寄せる。既存の価値観がすさまじいスピードでスクラップ&ビルドされていくシーンに突き付ける、アンダーグラウンドからの宣戦布告=『[2O2O]』。だが、これはum-humという新時代の始まりでしかない。um-humがその展望を語る全員インタビュー。


「Ungra」がバンドのかじを切ってくれた


――『[2O2O]』の制作は、どのぐらいの時期からイメージしていたんですか?

ろん れのん(Gt&Key):2020年の3月ぐらいですね。制作にはとにかく時間がかかりましたけど、全ては「Ungra」から派生してこうなったというか。“アンダーグラウンド”というテーマは頭にあったので、今作では「Ungra」以外にもそういう肉付けはしましたね。

――すごい。アンダーグラウンドをテーマに掲げ、これからより広いフィールドに打って出ていこうとするバンド(笑)。

ろん:僕はアングラ精神が根強いので、そこは譲れないんですよね(笑)。

――それこそum-humを結成する前から、ろんくんには「“特別”と言える音楽をしたい」という軸があって、その方法論としてのアンダーグラウンドだと。自分を突き動かすその衝動はどこからきていると思います?

ろん:バンド単位で考えているんですけど、um-humは全員、“汚れが落ちにくい油”みたいな感じの人たちなので(笑)、(シーンにおいて)とっつきにくい役であることに固執したかったんですよね。今作には昔ライブでやっていた曲も何曲かあって、“よく分からない曲”で終わらせていたものもまた掘り返して。まぁ掘り返したと言っても「Ungra」と「芥」の2曲なんですけど(笑)。「芥」は初期のライブでやっていた曲で、ある日、全員が手応えがないことに気付いて突然ライブでやるのやめたんですよ(笑)。「Ungra」も元々はそういう曲だったんですよね。

――最初は「Ungra」も全然違うベクトルで、もっと暴力的な曲だったと言っていましたね。

ろん:その2曲をツートップに持っていくことで、表現としてのアングラ精神を満たしている感じはあります。残りの6曲はそこから新しく作りましたけど、一応、とっつきにくい音楽はイメージしていたので。

――メンバー的には、当時の「芥」を思い出してみてどうです?

たけひろ(Ba):だいたい井岡(=ろん)が持ってくる曲は最初の段階ではよく分からないんですけど、この曲は特に分かりませんでした(笑)。

――以前、ろんくんは「Ungra」と「JoJo」は最大限キャッチーにしたとも言っていましたが、世間からすると十分オルタナですからね(笑)。とは言え、「Ungra」は大胆なモデルチェンジをしたことで、um-humを知ってもらう突破口になった曲だと思いますけど。

ろん:顔になる曲を作りたかったんですよね。今まではそういう曲もなく、やみくもに作ってきたので、顔になる曲さえ決まったら、他の曲も作り込む精神が湧いてくる。そういう意味では、「Ungra」がバンドのかじを切ってくれたので、すごく良かったなと思います。そこから、ある程度はスタジオで4人で考えるという風に、作り方もちょっと変えましたし。

――「Ungra」が1曲目にあることで、新しい時代が始まる空気をすごく感じました。

ろん:(ミニアルバムに再録する際に)イントロを付け足したいなとも思ったんですけど、そこはもう素直に、そのまま1曲目でいこうと。

小田乃愛(Vo):「Ungra」に関しては、当時とはまた違った意味で歌詞を理解したような……自分の中でどこか解釈が変わりつつあります。元々はある俳優さんが亡くなってSNSでの誹謗中傷が目立ってきた時期に、今伝えたいこととして7〜8パターンぐらい書いたんですけど、よくよく考えたら、これは自分の葛藤みたいな視点もあったのかなと。

――この1年間、歌い続けていくことで自分の歌詞に自分が気付かされた。ある意味、音楽がちゃんと独り歩きし始めたというか。

Nishiken!!(Dr&Sampler):僕はスキルの面で、「Ungra」をレコーディングした当時は「音を埋めなきゃ!」と思ってめちゃくちゃフレーズを増やしてアップアップになっていたんですけど(笑)、ちょっと俯瞰で見られるようになりましたね。「メロディを意識しながら叩けるドラムとは?」と考えて、いい意味で力の抜き方を覚えたというか。

――歌詞しかり、技術面においてもアプローチの変化を感じると。楽曲が完成したにも関わらず自分の中で変化し、シーンとの接点にもなったという意味では、um-humにとって、そして今作にとっても、重要な曲であることは間違いないですね。

ジャンルを横断することこそが、僕にとって本当の意味でリスナーを裏切ることなので

――その重要曲「Ungra」と対を成す「芥」は、そもそもどうやって生まれたんですか?

ろん:結成して半年も経たないぐらいで作ったんですけど、当時は今よりもアングラ精神が全開で、ライブでも「どれだけイベントを荒らせるか?」しか考えていなかったので(笑)、まずは「Ungra」でお客さんの耳をぶっ壊して、その上でトラップビートが欲しくて「芥」を作ったような気が……。

Nishiken!!:確かクラブイベントに呼ばれたとき、「それっぽい曲が欲しいから」と言って作ったと思う。

ろん:そうだ! だからラップにしたのか(笑)。

――この曲の展開やボーカルの声域の高低差は、サビにこだわらないum-humらしい構成で、だいたい普通は1つの方向性で1曲作るものですけど、um-humは何曲分かのアイデアが1曲にぶち込まれている感じがありますね。

ろん:僕は展開を変えたがるタイプの人間なので(笑)。そもそもジャンルを横断することこそが、僕にとって本当の意味でリスナーを裏切ることなので、多分それを無意識に作っているんですよね。

――だから、『[2O2O]』にはいろんなジャンルの曲があるというよりは、収録曲それぞれがそうなっている。まさにネオミクスチャーというか、um-hum独自のバランス感覚ですね。

ろん:本当は「芥」をリード曲にしたかったんですけど、僕以外誰も賛同しなかったのでやめました(笑)。

――(笑)。でも、収録にこぎつけたということは=曲が化けたのでは?

Nishiken!!:いやもう大化けしました! フェードアウトもせず、いつも謎のタイミングで曲が終わっていましたから(笑)。

ろん:アイコンタクトで何となく終わるという(笑)。それまでは展開の変わり方にやっつけ感があってちょっともったいなかったので、最後にめちゃくちゃロックになる部分はすごく考えましたね。リフとキメをベース(=たけひろ)と2人で作って、フェードアウトの曲を入れたかったのもあってあえてスッキリ終わらせず、不安が残る感じにしておきました(笑)。

たけひろ:今回はレコーディング前に僕ら2人だけでパソコンで録る、みたいな作業を初めてしたんですよね。

――今までは感覚でその都度違うことをやっていたのが、ちょっとした設計図を作って。

たけひろ:まさにそうですね。今まではぶっつけ本番で録っていたので、1回それを挟んだことによってスムーズに作業が進んだのかなと。

ろん:普通は誰が何を弾くかをだいたい決めておくものですけど、そういうことがあんまり好きじゃなかったのでアドリブだったというか。でも、レコーディングのときぐらいはちゃんと決めておかないといけないと、今回でさすがに学びました(笑)。

――「芥」=ゴミとかクズという意味ですが、初めて知りました。

ろん:僕も今知りました(笑)。

――(笑)。となるとやはり、芥川龍之介と関係が?

ろん:ありますね。大学の文学の授業で『蜘蛛の糸』(1918)を読んで、そう言えばそんな話があったなと思って。

――そうやって「Ungra」と「芥」のクオリティを引っ張り上げ、アルバムの核にまで持っていけた。ろんくんは曲をブラッシュアップする作業が楽しそうな印象ですね。

ろん:一度は捨てた曲が意外と輝くことがあるんですよね。倉庫で眠っていた曲が熟して今が食べどき、みたいな感じで。

――頭の2曲でum-humというバンドの得体の知れなさ、分からないということが分かる。このバンドが一筋縄ではいかないということが。


地下から宇宙に出ていく感じ……もう大気圏を飛び越えちゃうぐらい(笑)


――その2曲+「JoJo」を入れようという思惑は当初からあったと思いますが、他の曲に関してはどうですか?

ろん:僕は枠組みから作るタイプなので、「Ungra」をリードにした上で他にどういう曲が必要なのか……他の曲はミニアルバムを作ると決めてから全曲書きました。「Yawning」は最初から3曲目っぽい曲で、「Ungra」「芥」ときた後にちょうどいいum-humらしさ、みたいな装う感じが欲しくて作りました。だから全曲に役割がありますね。

――ろんくんが書く曲は、“こういう心の揺れがあったから、この曲が生まれた”というような感情の起点が音楽的なルーツと共にベールに包まれているのが特徴ですが、「Yawning」は珍しくパーソナルな部分が垣間見えるなと思ったんですけど。

――この曲のアウトロのギターをはじめ、気持ちよくグルーヴしていますね。

ろん:ただ、去年の6月ぐらいに何のアレンジも考えずに1回この曲を録ってみたときは、もうカスみたいな出来で(苦笑)。そこからドラムのスネアの音色とか、ベースのリフの弾き方とかも細かく決めていって、やっと良い感じになりました。だから、この曲のグルーヴについては結構考えましたね。一応、3作先ぐらいのことまで想定はしているんですけど、『[2O2O]』に時間がかかり過ぎたので、今思えばちょっと要領が悪かったなと。

――ただ、1年かけてプリプロやデモ制作でいろいろと吟味したりチャレンジしてきたとは言え、レコーディング自体は3日間で一気に録ったということでしたけど。

ろん:去年の6月ぐらいまではバラバラに曲を録っていて、どうも手応えがなかったんですよね。なので、冬に「1回ちゃんと気合いを入れよう!」みたいな感じで、もう一気に。

――その1年の試行錯誤があったからこそ、3日でバシッと録れたのはあるでしょうね。そして、ミニアルバムの後半には乃愛さんの作詞曲が続きます。

小田:個人的な想いが入っている曲は「続予報」ぐらいで、「20??」はカ行とタ行を多くする、みたいな言葉遊びを意識したり、自分の声にちょっとリズムが乗るようにしました。「続予報」は自分の身の回りにあったことを全部書いたような曲で、例えば“怒るグッピーは/屋根に跳ねる”の部分は、誰が聴いてもちょっと訳が分からないと思うんですけど(笑)、大雨が降っているときに家の中で(理屈抜きに)自分が思ったことをそのまま書いた、みたいな感覚ですね。でも、一番最後の“花は散り行く”は、四季が経過した後に、「これからの時代もいろいろあると思いますが、元気でいてください」みたいな想いを込めて。そういう意味でも、「20??」とちょっと合わせたのもあるんですけど。

――現実の風景を歌っても乃愛さんの捉え方=描写がファンタジックで、白昼夢のような不思議な感覚ですね。あと、「20??」や「space interval」は、どこかSF的要素もあって。

小田:「20??」は特にその辺を意識したかもしれないですね。最初に「20??」のデモを聴いたとき、「これはヤバいな!」と思って気持ちもノッてきて。だいたい、良い曲を聴いたときはすぐに歌詞が出てきて、“こういう場面でこういう出来事が起きている”みたいに、一瞬で考えられるんです。「20??」にはゲームみたいな音も入っているので、最後の“逃げ切れモンキー/お前らに任せた時代”は『サルゲッチュ』からイメージしたり(笑)。

――“「ヒットランナー/冠は無い/ばっちこいや/俺は勝つ」”のくだりは、um-humからの宣戦布告とも取れます。ろんくんはこの曲をどういう意図で作ったんですか?

ろん:最初は今の半分ぐらいのテンポの暗い曲で、試しに倍速にしてみたらめっちゃカッコよくなりました。(SF感は)今後、宇宙を題材にした曲や作品を作っていきたいと思っているので、伏線として入れましたね。地下から宇宙に出ていく感じ……もう大気圏を飛び越えちゃうぐらい(笑)。

――なるほど(笑)。アンダーグラウンドからそこまで突き抜けちゃうと。

ろん:これから出す作品で、どんどん上がっていけたらいいなと。今作も「Ungra」の地下から上がって、「JoJo」では地上に出ているような……そういう流れが出せて、すごく良かったなと思っています。


いや〜もう「地獄かな?」って正直、思いました(笑)


――今作においては歌声が持つ色気やはかなさ、芯もすごく出たと思いますが、3人は唯一の音楽未経験者だった乃愛さんの歌い手としての成長や、ステージにおけるフロントマンとしての佇まいも含めて、どう変わったと思います?

Nishiken!!:毎回ライブ後に録音した音を聴くんですけど、最近はめちゃくちゃ声が抜けるようになって。

たけひろ:でも、音楽をやってきていなかったのにライブではアーティストみたいな雰囲気があるのを最初から感じていたので、何かすごいなって。

――醸し出す雰囲気と進化がイコールになってきたというか。

たけひろ:そうですね、そこがつながってきた感じはあります。

ろん:結構挑戦的な新曲を渡しても何だかんだで歌いこなしてくれるので、すごいなと信頼もしています。だからこそ、ただ高い声が出せるとかじゃなくて、このミニアルバムみたいにいろんなアプローチで歌う方がいいかなと思って。

――乃愛さんの加入のきっかけは、ろんくんとたまたま同じ大学で帰り道が一緒になったからという割には、歌い手としての適性があって。例えば話し声とかから、何か可能性を感じていたんですか?

ろん:いや、全然分かっていなかったです(笑)。でも、昔はカラオケで99点を出すぐらいの人じゃないと歌手じゃない、みたいな考えだったじゃないですか。そりゃ多少はうまくないと困るけど、今は声質だったり歌い方、アイデンティティが重視される部分もある。そういう時代にすごく合っていたし、かつ本当に歌える人だったので、曲も作りやすいですね。僕は「これはラップ調で歌って」とか平気で言い出すので(笑)。

――乃愛さんからしたら「いや、一切やったことないけど」みたいな曲もいっぱいあるわけですもんね(笑)。

ろん:でも、それ以上のものが返ってくるので良いんですよね。

――素晴らしい。そう言われていますけど乃愛さん、レコーディングは実際どうでした?

小田:いや〜もう「地獄かな?」って正直、思いました(笑)。自分としてはまだまだ歌えていないと思っている分、どれだけ曲の世界観に入れるか……そこで今、結構葛藤していて。例えば「芥」みたいな曲は、「どうやって歌ったらいいんですか!?」みたいな(笑)。

――特に自分が作詞していない場合、そういうことは起こり得ますね。

小田:「どういう歌詞なんだろう?」と考えまくって手探りで歌って……「これでよかったのかな?」といまだに思うんですけど。

ろん:いや、それでいいんですよ。曲の世界観に入り込んで歌えている人は他にもいますけど、逆に演じている感が出過ぎてしらじらしく見えることもある。(乃愛は)それがしれっとできているのですごく良いと思います。

――中途半端に歌ってきて小慣れているシンガーより、ヘンな手あかが付いていない方が。

ろん:そう! そこが今回のレコーディングでもすごく出た気がします。

――あと、ろんくんもたまに、と言うか結構歌うじゃないですか?(笑) ろんくんのあどけない歌声も、楽曲における良いスパイスだなと思います。

ろん:確かに、「たまにはこういうスパイスがあった方がいいよな」と思って、その一節を引き立てるために今は歌っていますね。でもまぁ、今後は減っていくかと。

――それも曲ありきであり、乃愛さんの声の魅力を引き立てるためで。そう考えたらやっぱり、ろんくんはum-humのソングライターでありプロデューサーでもありますね。

ろん:……ありがとうございます!(照笑)


及第点は余裕で超えたなと思っています


――そして、インターバルとなるインストナンバー「space interval」も、ギラギラのシンセの音色とビートの応酬から雨音へ……と、幾つもの展開が繰り広げられる存在感のある楽曲で、最後の最後にはろんくんが敬愛する某アーティストのオマージュも感じられ(笑)。

ろん:気付きました!? 最後の最後まで聴いた人にだけ分かる感じがいいなと思って。

――遊び心と音楽愛を忍ばせつつのインストを経て、ラストの「secret track」は?

Nishiken!!:これも最初はR-18で(笑)。

――“週末の心晴れ模様”なんてほっこりする歌詞なのに!?(笑)

ろん:今は朝の天気予報の番組でかかるようなイメージですけど、変える前の歌詞はほぼ放送禁止用語です(笑)。レコーディングする1週間ぐらい前まではそれで突き通すつもりだったんですけど、(レーベルとのZoomミーティングで)「ちなみにどんな歌詞?」と聞かれて歌ったら、マジでシーン……となって(笑)。

(一同爆笑)

Nishiken!!:あれはめちゃくちゃ面白かった。これは笑ったらあかんと思ってこらえたけど(笑)。

小田:画面から消えた人もいましたからね(笑)。

ろん:でも、今の歌詞もすごく気に入っているので!

――たった1行の歌詞の繰り返しでしかないですけど、この曲が一番キャッチーかつフォーキーで、ちょっと和む雰囲気のメロディで。um-humとお茶の間との唯一の接点とも言えるのではないでしょうか(笑)。

ろん:今回のテーマはアンダーグラウンドですけど、その反骨精神としてポップな曲も欲しいよねと。でも、僕は素直じゃないのでそこにクソみたいな歌詞を乗せようと思って、(乃愛に)LINEかメッセージで「適当にひと言送って」と伝えたら、そのほぼ放送禁止用語が送られてきて(笑)。

小田:もう、即採用!(笑)

――ちょっと待って! それって元ネタは乃愛さん!?(笑)

小田:実はそうなんです。それこそ“シークレット”なんですけど(笑)。

ろん:だから、表面的にはちゃんとしているけど、実際はめっちゃフザけている曲です(笑)。

――そんな裏話があったとは(笑)。『[2O2O]』は冒頭からum-humのうまみでありエグみが怒涛のように押し寄せ、ホッとするようなポップソングで終わる。um-humのセオリーで言えば、最後に裏切らないことが裏切りみたいな。

ろん:「secret track」はカレーにチョコを隠し味で入れる、みたいな感じですよね。

――「Ungra」と「JoJo」は氷山の一角で、大器の予感が確信に変わるようなミニアルバムになったと思いますが、今作が完成したときはどう思いました?

たけひろ:3日しかない中で多くの曲を録ったので、完成した感動よりも安心感の方がデカかったですね(笑)。

Nishiken!!:それはそう! ホッとした。

ろん:及第点は余裕で超えたなと思っています。でも、これからですね。評価を聞かないと手応えを感じないので。

――ろんくんは以前、「やっぱり音楽は誰かに触れないと、触れられないと意味がない」と言っていましたが、その気持ちはアングラなモノ作りとは一見、相反するもののように感じますけど、何なんですかね?

ろん:何なんですかね?(笑) まぁでも、最初から一気にシフトチェンジするのは違うと思うので、4〜5枚ぐらい作品を出したとき、自分たちが「あ、この時代だ!」と思うタイミングで攻めたいですね。なので、今回はまだ全然アングラだと自分でも思う(笑)。でも、十分聴きやすくなったと思うし、満足しています。


このチャンスを逃したくない


――タイトルの『[2O2O]』は=2020年という象徴的な数字になりました。

ろん:何か3分ぐらいで決めたよね?

Nishiken!!:確かガストで話して。

――バンド名を決めたチャーハン達人から、今度はガストへと店を変え(笑)。

ろん:会計の前ぐらいに「タイトルはどうする?」みたいな話になって。

小田:最初は「もう『2020』でよくない?」ってなっていたよね。

Nishiken!!:でも、「そのまま普通にはしたくない、何かヘンな感じにしたい」みたいな話になって、「記号に変えるのはどう?」とか、どっちかと言うとそこから悩んだ感じですね。

ろん:一応、裏リード曲が「20??」なのでそれともちょっと重ねられるし、「JoJo」も2020年っぽい曲だし、結構つながっているのかなと。この曲たちは2020年のum-humなので2020年中に出したかったのもありますけど、2月ならまだギリギリOKかなと(笑)。

――タイトルも一見ストレートで実はひねくれているのもum-humらしいですね。ジャケットは今回も乃愛さん作で、絵を描くという行為も歌と共に乃愛さんのアイデンティティな感じがしますね。

小田:そうかもしれないですね。ちなみにこのジャケットのどこかに『[2O2O]』が隠れています(笑)。

――激動の1年をパッケージングしたミニアルバムができて、um-humとしては2021年をどういう1年にしたいですか?

ろん:去年1年でチャージできたので、今年からは曲の作り方を変えたり、新しいこともやっていきたい。スピードアップしてどんどん曲を出したいですね。『[2O2O]』からどれだけ早くより進化した新作が出せるかが肝だと思っているので。完成まで持っていくときの4人の意見のぶつかり合いとか楽曲の組み立て方、こういうやり方は人間的に向いている/向いていないとか、いろいろあるじゃないですか。それで去年は結構奮闘したので、そこを踏まえて今年は早く大気圏を出たい(笑)。

たけひろ:僕はライブの見せ方をもっとうまくなりたいですね。ついこの間のライブで、立ち位置をドラムを上手に、ベースを後ろに……みたいな新しい配置でやってみたら割とノレたので、そういう試みはこれからもどんどんやっていきたいなと思います。

Nishiken!!:音楽、ライブときて、僕は心を重視したいなと思っていて。メンバーそれぞれが良いと思う価値観に対して、どういう論理が働いているのかをしっかり見ていきたい。そこには絶対に理由があるはずなので、それをちゃんとかみ砕けるような会話をもっと増やしたいし、それが結局、全部に影響してくるので。2021年はその架け橋になりたいと思っています。

小田:(ろんを見て)この場で言うのも何ですけど私は、曲をみんなに渡すときに「ここがめっちゃ良いと思うから、ここを活かしたい」みたいなプレゼンをもっとしてほしいですね。今はもう丸投げカーニバルだから(笑)。

ろん:確かに(笑)。去年、そう言われて初めて曲の説明をしましたから。

小田:みんな、あなたのことをもっと知りたいのよ(笑)。

――周りから見ても不思議ですけど、メンバーから見てもそうなんですね(笑)。

小田:あとは、いつまでもコロナというワードを出すのはちょっとうざったいですけど、よりum-humを知ってもらうために、ライブだけだと範囲が狭まり過ぎるので、何か違うアプローチもしていきたいですね。MVにも凝っていきたいし、2021年はもっと見出せるものがあるはずなので。

――今まで通りの価値観が通用しなくなった時代だからこそ、um-humみたいなバンドはむしろチャンスなのかもしれない。

小田:今、表現する人たちは絶対に息が詰まっていて、どこから手を出したらいいのかも分からないし……でも、逆境こそ好機みたいな、このチャンスを逃したくないんですよ。今こそum-humが世に打って出ていけるような気がしてるんですよね。


Text by 奥“ボウイ”昌史

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